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ID管理・SOC・EDR・脆弱性対応をどう組み合わせるか 中堅企業のセキュリティー基盤設計で先に整理したいこと

情シス実務セキュリティ対策監視・運用管理

セキュリティー対策の相談を受けていると、「ID管理は総務系、EDRは情シス、脆弱性診断は年1回外部委託、SOCはこれから」といった状況をよく耳にします。それぞれ真面目に取り組んだ結果として今の姿になっているのですが、通しで見ると連携できていない、というのが実情ではないでしょうか。

本記事は、ID管理・SOC・EDR・脆弱性対応の4領域を、中堅企業の情シスがどう組み合わせて考えるかを整理するものです。製品比較ではなく、着手前に社内で何を決めておくとよいかの判断材料を提示することを目的としています。全部揃えることを勧めるものではありません。「今回はここまで、次はここから」の線引きの参考にしていただければと思います。

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目次

セキュリティー対策がバラバラになりやすい構造的な理由

ID管理、SOC、EDR、脆弱性対応が一気通貫で設計されているケースは、正直なところ多くありません。多くの中堅企業では、必要が生じたタイミングでその都度導入していった結果、気付けば別々の仕組みが並んでいる、という状態になっています。

導入時期のズレが残す運用の分断

たとえばEDRはランサムウェア被害の報道が続いた年度に導入し、ID管理はSaaS利用が広がった時期にIDaaSを追加、脆弱性診断は情報セキュリティー方針の改定にあわせて年次で実施。このように、それぞれ別の文脈で導入されているケースが少なくありません。設計思想を統一する余裕がないまま積み重なっていくため、後から「連携させたい」となっても、標準機能同士では思うようにつながらないことがあります。

担当部門が分かれることで生まれる情報のサイロ

ID管理は人事や総務が主管、端末セキュリティーは情シス、脆弱性診断は情報セキュリティー部門、といった分担も珍しくありません。責任範囲が明確になる一方で、インシデント時に「誰が全体を見るのか」があいまいになりがちです。

アラート・ログ・権限情報が連携していない現実

EDRが端末で不審な挙動を検知しても、その利用者がすでに退職しているかどうかが即座にわからない。ID管理側で権限変更が発生しても、EDR側の対象範囲は自動更新されない。こうした細かい連携のなさが、対応の遅れにつながります。

IT基盤全体のなかでのセキュリティー4領域の位置づけ

4つの領域を並列に語ると、どこから手を付けるべきかが見えにくくなります。それぞれが「基盤のどの層を守っているのか」で整理してみます。

ID管理 誰が、何に、どこまで触れるかの土台

利用者と権限を管理する層です。ここが崩れると、他のどの対策も効きにくくなります。退職者アカウントが残っているとEDRの検知範囲を絞れませんし、特権IDが棚卸しされていなければ、SOCが不審なログを見つけても正常か異常かを判断できません。

EDR 端末で起きた事象を検知・対応する層

端末単位で振る舞いを監視し、必要に応じて隔離や封じ込めを行います。ただし、検知した後に誰が判断して動くかを決めておかないと、通知が積み上がるだけになりがちです。

SOC 24時間365日の監視と一次対応を担う層

EDRや各種ログを集約し、監視・分析するのがSOCの役割です。内製する例もあれば、MSS ( Managed Security Service ) として外部委託する例もあります。どちらにするかは、社内の一次対応体制と密接に関わります。

脆弱性対応 資産と弱点を可視化し、直す順番を決める層

サーバーや端末、業務システムに存在する既知の脆弱性を洗い出し、修正の優先順位を付けて対処していく領域です。診断だけで終わらせず、日々のパッチ運用まで含めて考える必要があります。

中堅企業の実務では、この4つを一度に揃えることは体制的にも予算的にも難しいのが普通です。優先順位を付けるなら、ID管理と脆弱性対応の土台を先に固め、そのうえでEDR、SOCと組み立てていく流れが検討しやすいでしょう。ただし、すでにEDRだけ導入済みという場合は、ID管理との連携から着手するほうが現実的なこともあります。

ID管理とEDRを別々に運用したときに起こること

分けて運用していると、何が困るのか。実際に相談を受けるパターンをいくつか挙げてみます。

退職者・異動者の権限が残ったまま端末が動き続ける

人事側で退職処理は済んでいるのに、業務システムのアカウントや端末が残っている、というのはよくある話です。ID管理と端末管理が別々の仕組みだと、どちらか一方の処理漏れに気付きにくくなります。

端末の異常検知とアカウントの不審な挙動が別々に見える

EDRが「深夜に不審なファイル操作」を検知しても、ID管理側で「同じ時間帯に海外から同一アカウントのサインインがあった」情報とつながっていなければ、単発の警告として処理されがちです。連携できていれば、より速く「アカウント侵害の可能性」に到達できます。

インシデント調査時に「誰が」「どの端末から」の突合に時間がかかる

インシデントの後追い調査で、ログを別々のシステムから拾って手作業で突き合わせる、という現場は少なくありません。復旧の遅れは、事業影響を大きくします。

もっとも、これらは「統合すればすべて解決」というものではありません。統合の設計そのものにも運用工数はかかりますし、ツールを増やせば増やすほど、監視すべき対象も増えます。過度な期待は禁物です。

SOCを入れれば安心、にならない理由

「SOCを外部委託すれば運用が楽になる」という期待は、実務ではしばしば裏切られます。ここは判断を迷いやすいポイントなので、少し丁寧に整理します。

一次切り分けをする人がいないと、通知は溜まる

SOCサービスの多くは、検知した事象を通知するところまでが基本の役割です。「本当に対応が必要か」の判断や、対応の実行は、多くの場合、利用企業側に残ります。社内で受け取る担当がいなければ、通知は滞留するだけになります。

エスカレーション先が決まっていないと、夜間休日は止まる

深夜に重大アラートが来ても、誰にエスカレーションするのか、どの権限で対応してよいかが決まっていなければ、翌朝まで止まってしまうことがあります。SOC導入の効果は、社内側の対応フロー整備とセットで決まる、というのが実感に近いところです。

SOC側のレポートを読む担当が必要になる

月次の分析レポートは有用ですが、読み込んで自社の運用に落とし込む担当者が必要です。「レポートは届いているが、誰も見ていない」状態では投資対効果は上がりません。

SOCを外部化するのが悪いわけではありません。ただ、外部化すればするほど、社内側の受け皿設計が重要になる、という逆説的な構造があります。この点を織り込んで検討することをおすすめします。

脆弱性対応を「診断で終わらせない」ための設計

年次の脆弱性診断は実施している、という企業は多いのですが、「診断結果は受け取ったが、対応が半分も進んでいない」というケースも同じくらい多い印象です。

診断結果を「対応順」に落とし込む工程が抜けやすい

CVSSスコアの高いものから、と単純化しても、業務影響やパッチ適用の難易度で実際の優先順位は変わります。診断結果を、自社のシステム構成に照らして並べ替える作業が必要になります。

自動化できる領域と、人の判断が必要な領域を分ける

一般的な業務端末のOS・ブラウザー・オフィス製品のパッチは、自動適用の相性が良い領域です。一方で、基幹システムや工場系端末、レガシーな業務システムは、業務影響の検証を経ないと適用できないことが多く、自動化の対象外に位置づけたほうが無難です。自動パッチ運用の仕組みは選択肢の一つとして有効ですが、万能ではありません。

対応履歴を残すこと自体が監査対応につながる

「いつ、どの脆弱性を、どう対応したか」の記録は、監査対応やSCS評価制度への対応にも直結します。診断と対応をつないだ運用サイクルとして設計しておくと、後々の説明責任を果たしやすくなります。

統合設計を始める前に整理しておきたい前提

導入検討に入る前に、社内で先に整理しておくと後戻りが減る観点を挙げます。

運用の主体を決める

情シス、情報セキュリティー部門、外部委託先のどこが運用の主管になるのかを明確にします。「なんとなく情シス」で始めると、負荷が特定担当者に集中しがちです。

自動化と人の判断の線引きを決める

アラート対応、パッチ適用、権限変更のそれぞれで、どこまでを自動化してよいかを事前に決めておきます。ここが曖昧だと、ツール導入後に運用ルールを作り直すことになります。

現行資産・アカウントの棚卸し状態を確認する

サーバー、端末、SaaSアカウントの一覧が最新化されていないと、どのツールを入れても対象範囲がずれます。棚卸しに数か月かかるようであれば、統合設計はその後に回すという判断もあり得ます。

そして、「今回は見送る」も選択肢に入れることをおすすめします。体制が整わないまま導入しても、運用でつまずくことが多いためです。

ツールでは解決しきれない部分をどう埋めるか

4領域の統合設計は、ツール選定だけでは完結しません。運用ルール、手順、判断基準といった、人が担う部分の設計が必要になります。

一次対応・切り分けの体制設計、運用ルールと手順の言語化、継続的な改善サイクルの回し方。これらは、社内で整えるか、外部の支援を受けるかの判断が求められる領域です。横河レンタ・リースでは、インフラ構築で培った基盤側の理解をもとに、ID管理から運用支援までの設計を一緒に整理する支援も行っていますが、まずは自社内でどこまで抱えるかを整理していただくのがよいかと思います。

点ではなく線で設計するために

セキュリティー対策は、単体ツールを積み上げるだけでは運用が回りにくくなります。ID管理、SOC、EDR、脆弱性対応を「基盤設計の一部」として、つながった線で捉え直すことが起点になります。

とはいえ、いきなり4領域すべてを統合するのは現実的ではありません。まずは現行資産とアカウントの棚卸し、そして「今、どこが一番弱いか」の優先順位付けから始める、という順番が扱いやすいと思います。本記事が、社内での議論のたたき台としてお役に立てば幸いです。

FAQ

Q1. ID管理、SOC、EDR、脆弱性対応のうち、どれから始めるべきですか?

A. 一概には言えませんが、ID管理と資産・脆弱性の棚卸しが土台になるケースが多いです。すでにEDRが入っている場合は、ID管理との連携整理が次の一歩になります。自社の体制と、直近で困っている領域から逆算するのがよいでしょう。

Q2. SOCは内製と外部委託 ( MSS ) のどちらがよいですか?

A. どちらが正解ということはなく、社内で一次対応を担える人員がどれくらい確保できるかで決まる、というのが実務感覚に近い答えです。外部委託しても、通知を受けて動く担当と、エスカレーションのルールは社内側で必要になります。

Q3. 中堅企業でも4領域すべてを揃えるべきですか?

A. 必ずしも全部を揃える必要はありません。予算、体制、扱う情報の重要度に照らして、着手する領域と見送る領域を判断していく形が現実的です。「今回はここまで」という線引きも、立派な設計判断です。

Q4. 脆弱性診断は年に何回やればよいですか?

A. 一律の正解はありませんが、年次の定期診断に加えて、日常の脆弱性情報を継続的にウォッチする運用があるかどうかで、実質的なリスクは大きく変わります。診断の頻度よりも、診断結果を対応につなげる仕組みがあるかを先に確認したほうがよい場合が多いです。

まとめ

4領域の統合設計は、ツール選定から入るよりも、社内の運用主体・体制・棚卸し状態の確認から始めるほうが遠回りに見えて実は近道です。

横河レンタ・リースでは、セキュリティー基盤設計に関するご相談を承っていますので、社内の議論を進めるうえで整理の壁打ち相手が必要な場合はお声がけください。

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