企業がIT基盤を刷新するとき、サーバーやネットワーク機器の導入、クラウドサービスへの移行、業務アプリケーションの採用など、多岐にわたる支出が発生します。情報システム部門にとって悩ましいのは、「この支出をどの勘定科目で経理に申請すればよいのか」という点ではないでしょうか。
同じ「システム構築費用」でも、IT基盤の調達方式——つまり「所有するのか、利用するのか」「買い切りか、月額課金か」——によって、適用される勘定科目は大きく変わります。
本記事では、IT基盤の調達方式を起点に、勘定科目の判断に必要な考え方を整理します。
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勘定科目の分類は、一見すると経理部門だけの業務に思えます。しかし、どの調達方式を選ぶかを決めるのは、多くの場合、情報システム部門や経営企画部門です。
調達方式の選択は、会計処理だけでなくキャッシュフローや固定資産税の負担にも波及します。たとえば、サーバーを自社で購入すれば有形固定資産として計上し、毎年の減価償却と固定資産税が発生します。一方、同等のサーバーをレンタルで調達すれば月々の費用処理で済み、バランスシート上の資産は増えません。
つまり、IT基盤の調達方式を決める段階で、将来の会計処理の方向性も定まります。情報システム部門が経理部門と早い段階で認識を合わせておけば、予算策定から決算対応までの流れが格段にスムーズになります。
自社でハードウェアやソフトウェアを所有する場合、それらは固定資産の候補になります。サーバーやネットワーク機器は有形固定資産の「工具器具備品」、業務ソフトウェアは無形固定資産の「ソフトウェア」として扱うケースがあります。国税庁では、自社利用のソフトウェアは減価償却資産 (無形固定資産) に該当し、耐用年数は5年とされています。
一方、クラウドサービスのように提供事業者の環境をインターネット経由で利用する場合は、自社で資産を保有しないため、「通信費」「支払手数料」などの費用科目で処理するのが一般的です。
購入は自社資産になるため、取得価額に応じて固定資産に計上します。
リースは、2027年4月1日以後開始する事業年度から適用される新リース会計基準により、借り手側で使用権資産とリース負債を計上する考え方が導入されます。従来のオペレーティング・リースとファイナンス・リースの区分がなくなり、原則としてすべてのリース契約が資産・負債として認識される方向です。
レンタルは、短期間・柔軟な利用を前提とした契約形態です。サービス利用に近い実態であれば、「賃借料」や「レンタル料」として費用処理するケースが多くなります。IT機器の検証利用やプロジェクト期間限定の増設など、期間が限られる用途に適しています。
パッケージソフトを購入して自社環境で利用する場合、取得価額には購入代金に加え、導入に直接必要な設定費用やカスタマイズ費用も含めて判断します。
SaaS (Software as a Service) は、インターネット経由でソフトウェアの機能を利用する形態です。ソフトウェアそのものを自社が所有するわけではないため、月額利用料は「通信費」や「支払手数料」で処理するのが一般的な考え方です。
初期投資には、要件定義、設計、構築、導入設定、データ移行などの費用が含まれます。将来にわたって利用するシステム本体の取得に直接関わる部分は、資産計上の検討対象になります。
ランニングコストには、月額利用料、保守費、監視費、ヘルプデスク対応費などがあります。現行システムの機能を維持するための支出であれば、費用処理の候補になります。ただし、新機能の追加や大幅な性能向上を伴う改修は、資産計上を検討する必要があります。
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調達方式 |
具体例 |
主な勘定科目の候補 |
判断の考え方 |
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自社購入 (ハードウェア) |
サーバー、ストレージ、スイッチ |
工具器具備品、機械装置、減価償却費 |
物理資産を所有するため有形固定資産として整理 |
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自社開発・購入 (ソフトウェア) |
業務システム、在庫管理ツール |
ソフトウェア、ソフトウェア仮勘定 |
将来の業務効率化が見込まれる場合は無形固定資産 |
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クラウド (IaaS/PaaS) |
仮想サーバー、開発環境 |
通信費、支払手数料 |
基盤を所有せず利用する部分は費用処理が候補 |
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クラウド (SaaS) |
会計、CRM、グループウェア |
通信費、支払手数料 |
サービス利用料として費用処理が一般的 |
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パッケージ購入 |
買い切り型業務ソフト |
ソフトウェア、消耗品費、一括償却資産 |
金額・利用期間により資産計上か少額処理かを判断 |
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リース |
サーバー、PC、ネットワーク機器 |
使用権資産、リース負債、支払リース料 |
新基準では原則として資産・負債を計上 |
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レンタル |
短期利用機器、検証用サーバー |
賃借料、レンタル料、支払手数料 |
短期・一時利用であれば期間費用として整理 |
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保守・運用 |
監視、障害対応、軽微な修正 |
保守費、修繕費、支払手数料 |
現状維持の費用は費用処理の候補 |
勘定科目の最終判断は経理部門が行いますが、判断材料を提供するのは情報システム部門の役割です。以下の3点を整理して伝えると、部門間の認識のずれを防ぎやすくなります。
契約の実態
見積書や請求書の名称だけでは、勘定科目は判断できません。「構築費」と記載されていても、その内訳がソフトウェアの取得なのか、初期設定の作業費なのかで処理は変わります。情シス部門が契約の中身を分解して伝えることが大切です。
利用期間と更新の見通し
リースやレンタルでは、契約期間が会計処理に影響します。また、SaaSの年額契約が期をまたぐ場合は、前払費用としての処理が必要になることもあります。導入計画の段階で利用期間の見通しを共有しておくと、決算時の対応が円滑になります。
機能追加か、現状維持か
保守契約の中に新機能の追加が含まれている場合、その部分は資産計上の検討が必要です。「何を維持し、何を新たに追加するのか」を明確にすることで、経理部門の判断を助けます。
SaaSの初期設定費用は、ソフトウェアの購入ではなくサービス導入のための支出と見なされるケースが多く、費用処理の候補になります。ただし、税務上は法人税法施行令第14条第1項第六号ハに基づき、繰延資産として5年 (または契約期間) で償却する考え方が示されています。自社側で独自のプログラムを開発して連携する場合は、その開発費用は別途資産計上を検討する必要があります。
契約名称ではなく、契約の実態で判断します。特定の資産を一定期間使う権利が含まれている場合は、リースに該当する可能性があります。新リース会計基準では、「特定された資産の使用を支配する権利が移転しているか」が判断の基準になります。
レンタルは短期間・柔軟な契約のため、サービス利用として費用処理されるケースが多くなります。一方、リースは新会計基準の適用により、使用権資産とリース負債の計上が求められる方向です。調達方式の選択段階で、会計処理への影響を比較しておくことをお勧めします。
システム構築費用の勘定科目は、IT基盤の調達方式——「所有か利用か」「購入かリース・レンタルか」「パッケージかSaaSか」「初期投資かランニングコストか」——で方向性が定まります。
情報システム部門が調達方式を選ぶ段階で、経理部門と連携して会計処理の見通しを立てておけば、予算申請から決算対応までの負荷を大幅に軽減できます。
横河レンタ・リース株式会社では、日本ヒューレットパッカード社の Platinum パートナーとして、オンプレミス・クラウド・リース・レンタルを組み合わせたIT基盤の調達設計から、費用構造の整理まで、お客さまの状況に合わせてサポートしています。「どの調達方式が自社に合うのか分からない」「経理部門への説明資料を整理したい」といったお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
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