「クラウドに寄せるべきか、それとも HCI ( Hyper Converged Infrastructure ) でオンプレを刷新するか」。IT 基盤の更新時期を控えた情シス担当者から、こうした相談は年々増えています。ただ、この問いに一律の正解はありません。データの置き場所、運用体制、コスト構造、そして 3 〜 5 年後の変化見込み。これらの前提が違えば、結論も変わります。
本記事では、HCI とクラウドを「どちらが優れているか」ではなく「どの条件ならどちらが向くか」という視点で整理します。5 つの判断軸、迷いやすいグレーゾーン、導入前に押さえておきたい前提、さらに「更新を見送った場合に起きること」まで含めて、判断材料としてお使いいただける構成にしました。
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「サーバーの保守が来年で切れると連絡が来た」「仮想基盤の EOL 通知が届いた」。こうしたきっかけで、インフラの見直しを始める企業は少なくありません。
そこで最初にぶつかるのが、「今と同じ構成で更新するか、クラウドに寄せるか、HCI に切り替えるか」という選択です。少人数の情シスであれば、判断のための情報収集そのものが負担になります。ベンダーの提案は魅力的に映る一方で、比較の物差しが揃わず、話が進むほど迷いが深くなる、というのはよくある状況です。
前提として押さえておきたいのは、「どれが正解か」ではなく「自社の条件でどれが向くか」という問いの立て方です。この順序を逆にすると、比較表を眺めても結論が定まりません。
HCI は、サーバー・ストレージ・ネットワークをソフトウェアで統合し、一体的に管理できるようにしたオンプレミス型の IT 基盤です。物理的な機器は自社側に置きます。
一方、クラウド ( ここでは IaaS を想定 ) は、他社が用意した基盤を必要な分だけ借りて使う形になります。機能の違い以前に、「自社で持つか、他社の基盤を借りるか」という運用モデルの違いが最も大きなポイントです。
なお、仮想化との違いを気にされる方もいますが、仮想化はあくまで技術要素の 1 つです。HCI は仮想化を含んだ「基盤としてのパッケージ」、クラウドは「基盤の利用形態」と捉えると、頭の中が整理しやすくなります。
比較表を見る前に、どの軸で比べるかを揃えておくと、社内の議論もぶれにくくなります。ここでは 5 つの軸に絞って整理します。
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判断軸 |
オンプレ ( HCI ) が向く条件 |
クラウドが向く条件 |
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コスト構造 |
初期投資型 ( CapEx ) が合う、長期利用で回収したい |
月額従量型 ( OpEx ) が合う、繁閑差が大きい |
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拡張性 |
一定規模で計画的に伸ばす |
短期間で大きく増減する可能性がある |
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運用負荷 |
ある程度の運用要員が確保できる |
基盤運用を減らし、業務側に人を回したい |
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データ管理・セキュリティー |
社外に出せないデータが中心 |
出しても問題ないデータが中心 |
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EOL・保守 |
更新サイクルを自社で管理したい |
ハードの EOL 対応から解放されたい |
このうち 見落とされやすいのは、コストと運用負荷の 2 軸 です。
クラウドは「初期費用が抑えられる」と語られがちですが、通信費、データ転送費、監視・バックアップの追加サービス費などを積み上げると、5 年程度の総額ではオンプレとの差が縮まるケースもあります。逆に、HCI は「1 台単位ではなくノード単位で拡張する」ため、想定より小さく増やしたい場合には割高に感じられることもあります。
運用負荷についても、「クラウドにすれば運用が減る」というのは半分正解で、半分は誤解です。ハードの管理からは解放されますが、権限設計、コスト管理、ログ監視といった別の運用が増えます。
比較表を作っても、実際には表の中に収まらないケースがよく出てきます。ここでは、特に迷いやすい 3 つの論点を挙げます。
基幹系は社内に置きたいが、情報系はクラウドに出したい、というのはよくある話です。この場合、「全部クラウド」でも「全部 HCI」でもなく、ハイブリッド構成が現実解になることがあります。ただし、ハイブリッドは運用対象が 2 つに増えるため、少人数体制ではかえって負担が増える可能性もあります。
「全体の 1 割だけ社内に置きたい」という要件のために、オンプレ環境を丸ごと維持するのは非効率です。この場合は、クラウド中心の構成にしたうえで、機密データだけを別の手段で扱う設計が検討対象になります。
現場の声を丁寧に聞くと、「運用を減らしたい」ではなく「特定の作業だけを楽にしたい」だった、というケースがあります。この場合、基盤の刷新よりも、監視や運用ツールの見直しの方が先に効くこともあります。
比較を始める前に、社内で言語化しておきたい前提が 4 つあります。
目的:
コスト削減か、運用負荷軽減か、事業成長への対応か。複数ある場合は優先順位まで決める。
対象範囲:
全社の基盤か、特定システムだけか。範囲を絞ると比較しやすくなる。
運用体制:
現在の情シス人員、外部委託の割合、退職・異動リスク。
期間:
3 年で更新するのか、5 年以上使い続けるのか。
ここが曖昧なまま比較を始めると、ベンダーの提案ごとに評価軸がぶれ、結論を先送りしがちです。「担当者が 1 人しかいないため、その人が退職すると運用が止まる」といった前提こそ、比較の入口で共有しておきたい情報です。
比較の議論では、「動くか、動かないか」の二択で語られがちです。ただ、「今回は見送る」という選択にも、時間の経過とともに効いてくるリスクがあります。
ハードウェアの保守期限が切れ、故障時の復旧が長期化する。
部品調達が難しくなり、部分交換のコストが上がる。
運用ノウハウが特定の担当者に集中し、属人化が進む。
セキュリティー更新の適用範囲が狭まり、リスクが積み上がる。
これらは 1 年では表面化しにくく、3 〜 5 年かけてじわじわ効いてくるタイプの負債です。「見送り」を選ぶこと自体は問題ありませんが、その根拠と再検討の時期を決めておかないと、次の更新時期にも同じ迷いを繰り返すことになります。
ここまでの整理をふまえ、3 つの方向性それぞれで、向きやすい企業像をまとめます。
社外に出せないデータが中心で、オンプレを維持する前提がある。
情シスの人員は限られるが、ハードの運用は継続できる体制がある。
更新サイクルを自社で管理し、長期利用でコストを回収したい。
データの多くを外部基盤に置いても問題ない。
事業の伸縮が大きく、リソースの増減を柔軟に行いたい。
ハードの EOL 対応や機器管理から離れたい。
務システムごとに要件が明確に分かれている。
運用体制に一定の余裕があり、2 つの基盤を並行して扱える。
段階的にクラウドへ寄せていく、中長期の移行方針がある。
いずれも「どのタイプが優れているか」ではなく、社内条件との相性で選ぶものです。過度な期待は禁物で、どの選択肢にも運用上の手間や制約は残ります。
HCI とクラウドの比較は、機能表を並べるだけでは判断が難しく、自社の運用体制、データ要件、コスト構造、更新サイクルといった前提と組み合わせて、初めて意味を持ちます。
比較表を眺める前に、目的・対象範囲・運用体制・期間の 4 点を、紙 1 枚で構いませんので言語化してみてください。そのうえで比較表を見直すと、どの軸を重く見るべきかが自然と見えてきます。
A. 一律には言えません。短期利用や繁閑差の大きい用途ではクラウドが有利になりやすく、長期利用で稼働が安定している用途ではオンプレ ( HCI ) が有利になるケースもあります。5 年程度の総額と、運用にかかる人件費まで含めて比較することをお勧めします。
A. ハードの管理からは解放されますが、権限設計、コスト管理、ログ監視といった別の運用が発生します。全体としての負荷は「減る領域」と「増える領域」があるため、自社でどの作業を減らしたいのかを事前に整理しておくと判断しやすくなります。
A. 短期的には大きな問題が出ないこともありますが、保守期限切れ、部品調達難、属人化の進行など、時間の経過で効いてくるリスクがあります。見送りを選ぶ場合は、その根拠と、次に再検討する時期をあらかじめ決めておくと安心です。
A. 業務システムごとに要件が明確に分かれている場合には有効です。ただし運用対象が 2 つに増えるため、少人数体制ではかえって負担が増える可能性もあります。段階的に寄せていく前提で設計するのが現実的です。
HCI とクラウドの選択は、機能比較よりも、自社の前提整理から始めるとぶれにくくなります。目的、対象範囲、運用体制、期間の 4 点を言語化したうえで、5 つの判断軸で比較すれば、社内の議論も進めやすくなるはずです。
もし社内だけでの整理が難しい場合は、機器選定の前段階から相談できるパートナーに一度話をしてみるのも 1 つの方法です。横河レンタ・リースでも、IT 基盤の見直しに関するご相談を受け付けています。
横河レンタ・リース株式会社は日本ヒューレット・パッカード社の Platinum パートナーとして、IT 基盤の設計・構築・運用を長年支援してきた立場から、ITインフラ環境の見直しやHCIへの移行判断のご相談も承っています。
導入前提のご提案ではなく、現状の棚卸しと選択肢の比較からご一緒することが可能です。判断に迷われている段階でも、お気軽にご相談ください。
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