「監視ツールが増えすぎて、全体像が誰にも見えない」── そんな声が中小企業の情報システム部門から増えています。OpsRamp はその課題に応えるソリューションとして語られますが、製品像を正しくつかんでいる方は意外と多くありません。
本記事では自社検証で得た一次情報をもとに、OpsRamp を IT 基盤視点でどう活用できるか、どこに期待してはいけないかまで率直にお伝えします。
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先に結論からお伝えします。OpsRamp の監視機能は、製品全体のごく一部にすぎません。
実務の現場では「OpsRamp は監視ソリューションである」という認識が、依然として根強く残っています。しかし実機検証を通して見えてくる姿は、その理解とは異なります。アラートを取得するだけのツールではなく、検知からインシデントチケットの起票、リモートでの一次対応、そして既知障害の自動復旧までを 1 つのプラットフォーム上で完結させる、統合運用 (ITOM) のプラットフォームです。
また、本記事はベンダー資料の要約ではありません。横河レンタ・リースが自社検証環境に OpsRamp を実装し、HPE ProLiant Gen10/11、HPE Alletra 5010、Aruba スイッチ、そして自社 Web アプリケーション (Yellow Dash) を登録して一連の運用シナリオを検証した、その実測値と所感をベースに構成しています。
そのため、強みだけでなく、現時点で評価が分かれる点や運用設計上の前提条件も含めて率直に提示します。中小企業の情報システム部門にとって OpsRamp が IT 基盤にもたらす価値は何か。本記事はその判断材料としてお読みいただければ幸いです。
ツールの話に入る前に、まず現場で進行している "ひずみ" を整理します。読者ご自身の環境と照らし合わせながら読み進めてください。
オンプレミスの機器に加えてパブリッククラウドを併用する企業が増え、仮想化、コンテナ、マルチクラウドと、IT 基盤の複雑性は上がり続けています。複雑になるほど管理に必要なリソースは増え、担当者の負担も比例して重くなります。ここで重要なのは、ひずみは「ツール」ではなく「人と運用設計」の側に出やすいという点です。
サーバー用、ネットワーク用、クラウド用、アプリケーション用。気がつけば監視画面が 4 つ並んでいた、という現場は珍しくありません。導入時にはそれぞれ正しい判断だったはずです。
なぜ放置されるか。理由はシンプルで、「統合する」という意思決定そのものに、ふだんは誰もインセンティブを持たないからです。1 つの画面でアラートが上がる限り、その日の運用は回ります。ただ、半年後、1 年後に振り返ったとき、誰も全体を見ていなかった事実が残ります。
「この障害が起きたら、まず田中さんに連絡する」── そんな運用ルールが暗黙のうちにできていませんか。手順書は存在するが最新ではない、最新版はベテランの頭の中にだけある、という状態です。
なぜ放置されるか。手順書の作成と維持には多大な工数がかかります。承認プロセスを経て複数回の修正をくぐらせる必要もあります。結果として、最新化のコストよりも属人化を許容するコストの方が、短期的には小さく見えてしまうのです。
オンプレ機器の状況は A さん、AWS の状況は B さん、Azure は C さん。それぞれは正確に状況を把握していても、3 人が同時に同じ全体像を見ている瞬間はほぼありません。
なぜ放置されるか。「全体俯瞰」を担う役割が、組織図上に存在しないからです。誰の評価項目にも入っていない仕事は、誰のタスクにもなりません。ここに、統合運用の出番があります。
機能を箇条書きで並べると、製品の輪郭はかえって見えにくくなります。ここでは「目・耳・頭・手」という 4 つの役割で OpsRamp の働きを整理します。
「目」にあたるのがディスカバリー(検出機能)です。
オンプレ、ハイブリッド、マルチクラウドに散らばる IT 資産を自動的に検出し、構成情報を継続的に最新化します。手動更新が前提の管理台帳とは前提が違います。
「耳」にあたるのが Availability Monitor (可用性監視) です。
一般的な ping 疎通の確認にとどまらず、対象サーバー上で稼働しているサービスの状態までを「正常か否か」の判断材料に組み込めます。Apache Tomcat が起動しているかどうかを、可用性そのものの一部として扱える、と言い換えるとイメージしやすいかもしれません。
「頭」にあたるのが AIOps(AIを活用したIT運用管理) です。
アラートを機械学習で相関させて重複を抑制し、周期性を学習して次の発生時刻を予測します。実際に検証した中で、人間では気づきにくい "緩やかな周期" が浮かび上がってきたのが印象的でした。
「手」にあたるのがプロセスオートメーションです。
Ansible の Playbook、PowerShell、Python、Shell スクリプトを起点に、検知をトリガとした自動復旧フローを組み立てられます。
提供形態は HPE GreenLake 経由の SaaS で、3,000 を超える連携テンプレートが標準で用意されています。ただし強調しておきたいのは、すべての IT 基盤がこの 4 役割を等しく必要としているわけではない、ということです。
ここからは、横河レンタ・リースの検証環境で実際に確認できたポイントを紹介します。仕様書ではなく、触ってみて初めてわかる感覚に近い話です。
検証では、自社 Web アプリケーション Yellow Dash の Control Center サーバーで Apache Tomcat サービスを停止し、疑似的な障害を発生させました。その上で OpsRamp 側の挙動、復旧手順、自動化のフロー、それぞれを確認しています。
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検証した機能 |
確認できたこと |
体感したメリット |
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Availability Monitor |
サービス停止を即座に Critical として検知 |
"止まったか動いているか" を 1 つの指標で扱える |
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サービスマップ |
障害の影響範囲を 1 画面で可視化 |
上位者への一次報告がスムーズになる |
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アラート予測 |
周期性のあるアラートを事前に警告 |
ノイズ抑制と本質対応の切り分けが進む |
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プロセスオートメーション |
検知後 5 秒で自動復旧プロセスが起動 |
夜間障害の一次対応が無人化できる |
検証で扱いやすさが際立ったのがリモートコンソールです。TLS1.2 暗号化された通信でブラウザから対象サーバーに直接アクセスでき、VPN 接続が不要でした。操作は自動的に録画され、誰が、いつ、どの端末で、何を実行したかが残ります。
これは監査やコンプライアンスを気にする現場で効きます。実務ではここが問題になりやすいのですが、外部委託の運用者にも期限付きアクセス権 (ジャストインタイムアクセス) を発行できるため、VPN アカウントの棚卸し問題から解放されます。
サービスマップを作成しておくと、障害が発生したリソースが上位のどのサービスに影響しているかが、画面上で即座に判別できます。検証中、Control Center サーバーの障害が「Yellow Dash システム全体」に波及していることが直感的にわかりました。
ただし、サービスマップはユーザー側で作成・メンテナンスが必要です。ここが少し悩ましいところで、構成変更のたびに地道に更新するか、運用設計に組み込んでおくかの判断が分かれます。
検証では、毎日同じ時刻に発生する疑似障害について、OpsRamp が「次回もこの時間帯に発生する可能性が高い」と予測してくれました。短期間の検証だったため日次の周期でしたが、これが数週、数か月の周期になったときに価値が立ち上がるはずです。人が経験則で気づくのを待つよりも、数値で先回りできる余地が広がります。
最も印象的だったのは速度差です。同じ Tomcat 停止に対して、手動で SSH 接続して状態を確認し、コマンドを打ち、結果を確認する一連の流れと、OpsRamp の自動プロセスとを比較すると、明らかな差がありました。検知から 5 秒後には自動プロセスが走り、障害復旧に取り掛かっていた ── これが検証中に確認できた実測値です。
ただし、ここには前提があります。自動復旧の中身は、手動で行った復旧手順を Ansible の Playbook に落とし込んで初めて成立します。Playbook を書く工数を惜しまない覚悟が、自動化を機能させる条件です。
機能の話はいったん脇に置きます。ここでは、自社で導入するかどうかを判断するときに必ず突き当たる 4 つの問いを整理します。それぞれに「Yes の目安」「No の目安」を添えますので、自社の状況を当てはめてみてください。
オンプレ、AWS、Azure、ハイパーバイザー、SaaS、ネットワーク機器。これらの数が増えるほど、統合管理の効用は上積みされていきます。
Yes の目安:管理対象が 3 つ以上のプラットフォームに分散している
No の目安:オンプレ単一、もしくは単一クラウドに収まっている
例えば、製造業で情シス 3 名体制、オンプレと AWS と Azure を扱っている、という構成であれば、検討に乗せる価値は十分にあります。
1 か月あたりのアラート件数を、現場で対応している人数で割ってみてください。1 人あたりの対応件数が増加傾向にある場合、MTTR (平均復旧時間) は悪化方向に動いている可能性が高いです。
Yes の目安:アラート量が増えているのに人員は据え置き、MTTR が伸びている
No の目安:アラート量と人員が均衡し、運用が回っている実感がある
ここは現場ごとに分かれる論点ですが、既存の ITSM や監視ツールへの投資・運用ノウハウは無視できません。OpsRamp は ServiceNow をはじめ多数のツールと連携できるため、置き換えではなく "上に乗せる" 選択肢が現実的なケースもあります。
Yes の目安:既存資産は活かしたい、しかし統合ビューは持ちたい
No の目安:既存ツールに大きな不満がなく、サイロ化も顕在化していない
OpsRamp はもともと MSP (マネージドサービスプロバイダ) 事業者向けに開発された経緯があります。マルチテナント設計のため、運用を SIer や MSP に委託する前提とも相性が良いツールです。
Yes の目安:運用を委託しており、委託先と統合的に状況を共有したい
No の目安:完全内製で、当面その方針を変える計画もない
「現状維持で困っていない」と感じる方ほど、いったん立ち止まって読んでいただきたいセクションです。導入しない選択がもたらす変化は、急激ではなく、じわじわと進みます。
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現場で観測される症状 |
1〜2 年後の影響 |
経営層への説明難度 |
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監視ツールが少しずつ増える |
統合コストが増加、人員依存が強まる |
説明が難しい (各ツールに正当性があるため) |
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手順書の更新が遅れる |
新人教育が属人化、退職リスクと直結 |
数字で示しにくい |
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夜間アラートの誤検知が増える |
担当者の疲弊、離職率上昇 |
経営の関心は離職後に向く |
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クラウドコストが見えづらくなる |
予算超過の発覚が四半期末にずれ込む |
比較的説明しやすい |
この種の劣化は派手な事故にはつながらないため、優先度が下がりがちです。ですが、振り返ってみると確実に積み上がっています。
ここからはベンダー資料では触れにくい話です。検証を通じて見えた、率直な注意点を 3 つお伝えします。OpsRamp は "運用を整える" ツールであって、"運用を肩代わりする" ツールではありません。
現時点で日本語対応は限定的です。管理画面、ドキュメント、エラーメッセージ ── いずれも英語表記が基本になります。検証担当者の実感として、UI が英語であること以前に、Availability Monitor のような独自の概念設計に最初は戸惑いました。
運用設計時には、英語表記への一定の習熟をチームメンバー全員に求めるのか、もしくは特定の担当者に集約するのか、方針を先に決めておくとスムーズです。
自動化が威力を発揮するのは、復旧手順がすでに確立している障害に限られます。新種の障害、原因不明のトラブル、複雑に絡み合った劣化現象には自動化は効きません。
見落とされがちですが、自動化は手順書の延長線上にあります。手順書が整備されていない現場で OpsRamp を入れても、自動化の対象がそもそも見つかりません。
機械学習による予測は、データが溜まって初めて精度が出ます。検証中の手応えでは、最低でも数週間から数か月のデータ蓄積期間を見込んでおくのが妥当です。「導入翌日からアラート 90 %削減」を期待すると、確実に肩透かしを食らいます。
ここまで読まれた方は、おそらく「では何から始めるべきか」を知りたいはずです。手順書としてではなく、判断の小さな積み重ねとして整理します。
まず、いきなり全社展開はしないでください。最初の対象は 1 サイト、1 クラウド、もしくは特定システムに絞ります。スコープを狭くすればするほど、PoC (検証導入) の見極めが早く、確実になります。
次に、最初の 90 日で見るべき KPI は 2 つに絞ります。アラート件数の推移と、インシデント収束時間の中央値。この 2 つが想定方向に動いていれば、スコープを段階的に広げる判断材料になります。
そして、内製で完結させる必要はありません。横河レンタ・リースのようなサーバー運用支援サービスを併用することで、OpsRamp の運用設計やテンプレート整備を外部の知見に任せながら、自社は判断と意思決定に集中する、という現実的な道もあります。
ここは現場ごとに分かれる論点ですが、PoC の段階から運用パートナーを巻き込んでおくと、本番展開後の立ち上がりが明らかに違ってきます。
OpsRamp は、単一機能の監視ツールではなく、IT 基盤の運用設計そのものに踏み込むためのプラットフォームです。豊富な機能を備えているからこそ、自社の運用課題に合わせて柔軟に組み立てられます。
問いはシンプルです。自社の IT 基盤は、今どの段階にいるのか。ツールを増やす段階か、整理する段階か、それとも仕組みごと組み直す段階か。
答えは、自社の運用密度の中にしかありません。
機能としては使えます。ただし、本来はエンタープライズ向けに設計された製品です。クラウドや複数プラットフォームの統合管理ニーズが薄い小規模環境では、機能を持て余す可能性があります。スコープを限定した PoC から始めることをおすすめします。
必ずしも置き換えではありません。OpsRamp は 3,000 を超える連携テンプレートを標準で備えており、既存ツールからアラートを取り込んで統合ビューを作る使い方が可能です。資産を活かしながら統合する、という選択肢が現実的なケースは少なくありません。
検証環境では再現できました。ただし、これは復旧手順を Ansible の Playbook として整備済みであることが前提です。手順書の整備されていない障害に対しては、自動化そのものが発動しません。数字の前提条件は必ずセットで捉えてください。
現時点で日本語対応は限定的です。実運用では、英語 UI への習熟をチーム内でどう確保するかを設計時に決めておく必要があります。情シス担当者の英語耐性、ドキュメント整備の方針、社内研修の有無 ── これらが導入の成否を分けます。
本記事でご紹介した内容は、横河レンタ・リースが実機で検証した結果の一部です。検証レポート本編では、以下のような内容まで踏み込んで解説しています。
機器登録から監視テンプレート適用までの実装手順
Availability Monitor の設定画面と運用上の勘所
サービスマップ作成例と障害発生時のダッシュボード画面
プロセスオートメーション (Ansible Playbook 連携) の具体フロー
アラート予測の検証結果と画面キャプチャ
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なお、OpsRamp の導入検討、PoC のスコープ設計、サーバー運用支援サービスとの組み合わせなど、個別のご相談も同フォームよりお受けしております。お気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いた人
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