「パンがいい」と言ったのに、数分後には「ごはんがよかった」
子育てをしていると、そんな“要件変更”に日々直面します。
実はこの経験、ITインフラの提案や設計の現場で行う「要件定義」とよく似ていました。
本記事では、3歳児との朝食をめぐるやり取りを通じて見えてきた「本当に求められていることを理解する難しさ」について、インフラエンジニアの視点から考えてみます。
はじめまして。
私は横河レンタ・リースでITインフラの提案や設計に携わっているエンジニアです。
普段は、お客様の課題を伺いながらサーバーやクラウド、バックアップ環境などの提案を行っています。
一方、プライベートでは3歳と1歳の子どもを育てる父親でもあります。
このコラムでは、子育ての中で感じた出来事を、インフラエンジニアの視点から少しだけ読み解いてみたいと思います。
技術解説ではありません。
子育てエッセイでもありません。
「インフラエンジニアの目には、子育てがこう見える」
そんな視点で気軽に読んでいただければと思います。
「朝ごはん何食べる?」
ある日の朝、3歳の息子に聞いてみました。
「パン!」
即答です。
迷いのない回答に、私は満足しました。
ヒアリング完了。その時の私はそう思い込んでいました。
すぐにパンを焼き、ヨーグルトを用意し、飲み物を準備する。
短いながらも、しっかり要件確認をしたつもりでした。
ところがです。
食卓に並べた瞬間、息子はこう言いました。
「ごはんがよかった。」
開始5分で要件変更です。
理由を聞いても
「なんとなく。」
ヒアリング継続です・・・。
最初の頃は不思議でした。
なぜ数分前に言ったことが変わるのだろう。
しかし、よく観察すると少し違うことが見えてきます。
本人は嘘をついているわけではありません。
その瞬間はパンが食べたいと思っていたはずです。
ただ、本当に欲しかったものを知るには確認不足だったようです。
ジャムを塗りたかった
こんな理由が根気強くヒアリングをすると出てきます。
ただし、なぜそこからごはんが食べたいという結論になったのか思考回路は不明です・・。
いずれにしても、たった一言の確認で済むほど3歳児の要件定義は甘くありませんでした。
これは仕事にも置き換えられる話です。
お客様から
「サーバーを増やしたい」
という相談をいただくことがあります。
はじめは性能不足が理由とのことでしたが、詳しく話を伺うと
運用負荷が高い
といった別の課題も抱えていたりします。
その他にも
「クラウドへ移行したい」
という要望があった場合も
実はクラウド化そのものが目的ではなく
これまた運用への不安を解消したいという課題が聞き出せることもあります。
お客様は間違った認識をしているわけではありません。
大人でも、自分の課題を完全に整理してすべて伝えることは難しいのだと思います。
ましてや3歳児には至難の業です。
子育てに関わる以前の私は
相手の言ったことを正確に実現することが最も重要だと思っていました。
しかし、最近は考え方が少し変わりました。
大切なのは
「何をしてほしいと言われたか」
ではなく
「なぜそれを求めているのか」
を理解することだと思っています。
一度聞いて終わりではなく
背景を確認したり
会話を重ねたりすることが必要です。
これは子育ても同じです。
もっとも、こちらの相手は3歳児。
ヒアリングを終えた5分後に新しい要求の繰り返しです・・・。
子育てを通じて学んだことがもう一つあります。
それは、完璧な要件定義は存在しないということです。
人は変わります。
状況も変わります。
昨日の正解が今日も正解とは限りません。
そこで重要なのは
「変更が起きない」ことではなく
「変更に対応できる」ことなのだと思います。
これはITプロジェクトにも通じるかもしれません。
この原稿を書いている今も、新しい要件定義が発生しています。
朝ごはんは「パンがいい」と言っていた息子ですが
昼ごはんは「うどんがいい」と主張しています。
根気強いヒアリングを継続中です。
こんな毎日をお客様との要件定義にも活かしたいところですが
まずは目の前の小さなお客様対応が最優先です・・・。
気づけば我が家の「なんでも担当」
保育園の連絡アプリ、行事予定、持ち物ルール。薬の飲ませ方。などなど
気づけば私の知らないことが増えていました・・・。
ITインフラの世界では、その状態を「SPOF(単一障害点)」と呼びます。
次回は、家庭の中で見つけた"属人化のリスク"について考えてみます。
※11月上旬公開予定
この記事を書いた人
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