ファイル共有の仕組みを更改するとき、「NASにするか、これまでどおりファイルサーバーにするか」で迷う情報システム担当者は少なくありません。NASという言葉はよく聞くものの、ファイルサーバーと何が違い、自社にどちらが向くのかは、意外と整理されないまま話が進みがちです。
しかも更改は、容量が足りなくなった、機器が老朽化した、といった差し迫った理由で始まることが多く、じっくり比較する時間を取りにくいのが実情です。その結果、容量だけを見て選び、後から可用性や復旧のしやすさで悩む、ということも起こります。
本記事では、NASとは何かをファイルサーバーとの違いから整理し、更改のタイミングで検討すべき理由と、容量・可用性・バックアップ・運用負荷という選定軸を解説します。あわせて、NASはバックアップではないという誤解にも触れ、自社に合う構成を見極めるための判断材料を示します。
お問い合わせ
お気軽にご相談ください。
要点として、NASはネットワークに接続してファイルを共有するための専用ストレージであり、ファイルサーバーとは役割が近い一方で、専用機か汎用サーバーかという違いがあります。
NAS (Network Attached Storage) は、ネットワークにつないで複数の利用者でファイルを共有するための、ストレージに特化した機器です。ファイル共有の機能があらかじめ組み込まれており、比較的手軽に導入できます。一方のファイルサーバーは、Windows ServerやLinuxといった汎用のサーバーOS上にファイル共有の役割を持たせたもので、共有以外の機能を柔軟に追加できます。
両者を対比すると、次のような違いがあります。
|
観点 |
NAS |
ファイルサーバー |
|
位置づけ |
ファイル共有に特化した専用機 |
汎用サーバーに共有の役割を持たせたもの |
|
導入のしやすさ |
比較的手軽に導入しやすい |
構築や設定に手間がかかりやすい |
|
拡張・カスタマイズ |
機能は限定されやすい |
権限管理や他機能と柔軟に組み合わせやすい |
|
運用の担い手 |
専任でなくても運用しやすい場合がある |
サーバー運用の知識が求められやすい |
判断ポイントは、自社が求めているのが「手軽に使えるファイル共有」なのか、「細かな権限管理や他システムとの連携まで含めた基盤」なのかという点です。更改を考えるときは、今の使い方がどちらの延長にあるのかを見極めると、選択の方向が定まりやすくなります。
ここで注意したいのが、「NASを置けばバックアップは要らない」という誤解です。NASはあくまで共有のためのストレージであり、データを守るバックアップとは役割が異なります。NAS自体が故障すれば、その中のデータも失われます。この点は後の章でも改めて触れます。
要点として、NASやファイルサーバーの更改は、容量不足や老朽化がきっかけになることが多く、限られた時間の中で構成を見直す難しさがあります。
現場でよくあるのは、共有フォルダーの容量が逼迫し、「もう空きがない」という状態になって初めて、慌てて更改を検討し始めるケースです。こうなると、とにかく容量の大きい機器へ、という発想になりがちで、可用性や運用のしやすさといった観点まで手が回らなくなります。
更改を検討する主な理由には、保存データの増加による容量不足、機器の老朽化や保守期限の到来、アクセス集中による性能の頭打ち、RAID構成の見直しの必要性などがあります。判断ポイントは、これらのうち自社にとって差し迫っているのはどれか、そして次の更改までの数年間でどこまで増えそうかを見積もれているかどうかです。
判断が難しいのは、更改が急ぎで始まることが多く、比較検討の時間を取りにくいためです。ここで容量だけに目を奪われると、いざ機器が故障したときに復旧に時間がかかる、業務が止まる、といった問題が後から表面化します。急ぎのときほど、容量以外の軸も一度立ち止まって確認しておくことが望ましいでしょう。
要点として、更改時の選定は、容量・可用性・バックアップ・運用負荷という複数の軸で見ると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
それぞれの軸で確認したい点を整理すると、次のようになります。
|
選定軸 |
確認したいこと |
見落としやすい点 |
|
容量 |
現在の使用量と、数年先までの増加見込み |
逼迫してからでは選択肢が狭まる |
|
可用性 |
RAID構成、冗長化、故障時の復旧のしやすさ |
容量優先で可用性が後回しになりやすい |
|
バックアップ |
バックアップ先との組み合わせ、復旧手順 |
NAS単体では守りきれない |
|
運用負荷 |
監視・更新・権限管理の手間、担い手 |
導入後の運用体制が考慮されにくい |
判断ポイントは、これらの軸に優先順位をつけることです。すべてを最高水準にすれば費用がかさみますし、逆に容量だけを見れば可用性が犠牲になります。自社の業務にとって、止まると困るデータはどれか、どこまでの停止なら許容できるかを踏まえて、軸のバランスを決めることになります。
とくに注意したいのが、バックアップの位置づけです。RAIDで冗長化していても、それはディスク故障に備える仕組みであって、バックアップの代わりにはなりません。操作ミスによる削除や、ランサムウェアによる暗号化が起きれば、NAS内のデータもろとも被害を受けます。近年はNASを狙う攻撃も見られ、共有ストレージがそのまま被害の起点になることもあります。データを守るには、NASとは別の場所にバックアップを取り、復旧できる状態にしておくことが欠かせません。バックアップの考え方については、3つのコピー・2種類の媒体・1つの遠隔保管という整理の仕方もあわせて参考になります。
|
あわせて読みたい NASとは別に、データを守るバックアップの考え方を整理したい方はこちら。 |
要点として、NASとファイルサーバーはどちらが優れているというものではなく、規模や運用体制、既存資産によって向き不向きが分かれます。
向いている:手軽にファイル共有を始めたい、専任のサーバー運用担当を置きにくい、比較的小〜中規模で使いたい場合。
向いていない:細かな権限管理や他システムとの連携、独自の要件が多く、柔軟なカスタマイズが必要な場合。
向いている:既存のサーバー基盤があり、権限管理や他の役割と組み合わせて運用したい場合。
向いていない:運用の担い手が限られ、構築や維持の手間をかけにくい場合。
更改の進め方としては、まず現在の使用量と、次の更改までの増加見込みを把握し、容量・可用性・バックアップ・運用負荷の優先順位を決めます。そのうえで、NASとファイルサーバーのどちらの延長で考えるかを選び、移行の段取りを組みます。
ここで見落とされやすいのが、データ移行そのものの負担です。大容量のデータを移すには時間がかかり、移行中の業務停止や、移行後のデータ整合性の確認も必要になります。また、機器を新しくしても、監視やバックアップ、権限管理といった運用は残ります。ツールを導入すれば手間の一部は軽くなりますが、誰がどう運用するかという体制の問題は、それだけでは解決しません。更改は機器の入れ替えだけでなく、移行と運用まで含めて計画することが望ましいでしょう。
環境によって異なります。手軽にファイル共有を始めたい、専任の運用担当を置きにくいならNASが選択肢になり、細かな権限管理や他システムとの連携が必要ならファイルサーバーが向くことがあります。今の使い方がどちらの延長にあるかを見極めることが判断の手がかりになります。
不要にはなりません。NASは共有のためのストレージであり、バックアップとは役割が異なります。RAIDで冗長化していても、操作ミスやランサムウェアによる被害には対応できません。NASとは別の場所にバックアップを取り、復旧できる状態にしておくことが必要です。
現在の使用量と、次の更改までの容量の増加見込みを把握することから始めると整理しやすくなります。そのうえで、容量・可用性・バックアップ・運用負荷に優先順位をつけ、自社の業務にとって重要な軸を決めていくことが現実的です。
データ移行には時間がかかり、移行中の業務停止や、移行後のデータ整合性の確認が必要になります。また、機器を新しくしても運用は残るため、監視やバックアップ、権限管理を誰がどう担うかを、移行計画とあわせて考えておくことが望ましいでしょう。
NASの更改は、容量だけでなく、ファイルサーバーとの違いや複数の選定軸を踏まえて考えることが要点になります。この記事の要点を整理すると、次のとおりです。
NASはファイル共有に特化した専用機、ファイルサーバーは汎用サーバーに共有の役割を持たせたもの
更改は容量不足や老朽化がきっかけになりやすく、容量以外の軸を見落としやすい
選定軸は、容量・可用性・バックアップ・運用負荷の4つ
NASはバックアップではない。別の場所への保管と復旧手段が欠かせない
更改は機器の入れ替えだけでなく、移行と運用まで含めて計画する
今の使い方を整理し、選定軸に優先順位をつけ、移行と運用まで見通す。この順序で進めることが、更改後に困らないための現実的な進め方と考えられます。
NASとファイルサーバーのどちらが自社に向くか、あるいは更改時にどの構成が適切か判断が難しい場合は、現在の使用状況や要件を整理したうえで検討するという選択肢もあります。容量や可用性、バックアップの組み合わせについて相談することもできます。
横河レンタ・リース株式会社では、日本ヒューレット・パッカード社のPlatinumパートナーとして、IT 機器のレンタル・販売に加え、ストレージやサーバーの調達から構築、運用保守までを組み合わせて提供しています。
NASとファイルサーバーの選定や、バックアップを含む構成の検討を自社だけで進めるのが難しい場合は、現状の整理やご相談から始める選択肢もございます。お客さまのIT基盤に合わせてワンストップでのご支援も可能となっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
横河レンタ・リース株式会社
私たちはお客さまに寄り添い、マルチベンダーの強みを活かして、安心して長く使えるITインフラを設計から運用まで一緒につくるシステム事業を展開しています。
お問い合わせ
お気軽にご相談ください。
HVM は、単⼀のインターフェイスからKVMベースとVMwareベース両⽅の仮想マシンをプロビジョニングや管理することが可能です。
横河レンタ・リース株式会社
160-0023 東京都新宿区西新宿1-23-7 新宿ファーストウエスト
Google Map
Copyright©Yokogawa Rental & Lease Corporation All Rights Reserved.