第一回のブログでは、VM Essentialsの製品概要や「なぜ今注目されているのか」をご紹介しました。
2024年のBroadcomによるVMware買収以降、ライセンス体系の変更によりコストが大幅に上昇するケースが相次いでいます。こうした状況下で「VMwareに代わるオンプレミス仮想化基盤」として注目を集めているのがVM Essentialsです。CPUソケット単位のシンプルなライセンスモデルや、KVMベースのオープンアーキテクチャーによるベンダーロックインの回避が特に高く評価されています。
まだ第一回をお読みでない方は、以下のリンクからご覧ください。
▼ 第一回:技術ブログはじめました~HPE Morpheus VM Essentials Software とは~
https://www.sysbiz.yrl.com/column/tech-brog-001-vme
VM Essentialsを使い始めた当初、私はインスタンスを「仮想マシン (virtual machine, VM) 1台を指すもの」だと考えていました。
ただ、実機で挙動を見ていくと、少なくとも運用上は 単一の仮想マシンというよりも、関連する仮想マシンをまとめて扱うための単位 と考えた方が分かりやすいと感じました。
HPEの公式ドキュメント (Provisioning Concepts) では、インスタンスについて以下のように説明されています。
"An Instance is more of a representation of a resource or service. This service may involve several virtual machines, as in the case of a database cluster or horizontally-scaled web servers."
(意訳:インスタンスは、より「リソース」や「サービス」を表すものです。このサービスには、データベースクラスタや水平方向にスケールされたWebサーバーのように、複数の仮想マシンが含まれる場合もあります。)
出典:Instances (v8.1.2)
https://support.hpe.com/hpesc/public/docDisplay?docId=sd00007735en_us&page=GUID-4A3953E9-FB5E-4552-9DA3-EA1BBFAFC89D.html
つまり、VM Essentialsにおけるインスタンスは「仮想マシン 1台分」という単純な概念ではなく、複数仮想マシンをひとまとまりで管理するための単位として設計されています。VMware vSphereの「仮想マシン」とは異なる考え方であるため、初めて触れる方はこの違いを押さえておくとよいと思います。
HPEの公式ドキュメントでは、インスタンスの配下にある個々の仮想マシンやコンテナを「ノード (node) 」と呼んでいます。1つのインスタンスは複数のノードを持つことができ、ノードはプロビジョニングエンジンに応じて仮想マシンまたはコンテナとして表現されます。
VMware vSphereでは「仮想マシン」が管理の最小単位であり、vCenterのインベントリー上でも1つの仮想マシンが1つのオブジェクトとして表示されます。一方、VM Essentialsでは「インスタンス」が管理の基本単位であり、1つのインスタンスの中に複数の仮想マシンを含むことができます。この違いを理解しておくと、VM Essentialsの操作画面で戸惑いにくくなるでしょう。
仮想マシン作成時の画面には スケールファクター (scale factor) という項目があり、設定値によっては同一構成の仮想マシンを同じインスタンス内に一括展開できました。たとえば、スケールファクターを「3」に設定すると、同じ構成の仮想マシン 3台が1つのインスタンスとして作成されます。
さらに、作成後のインスタンスに対しても [Action] → [Add Node] からノード追加が可能でした。運用中にリソース不足が判明した場合など、既存のインスタンスに対して柔軟にスケールアウトできる点は、実運用で大きなメリットになるでしょう。
この挙動を見ると、インスタンスは「仮想マシン 1台分」というよりも、複数の仮想マシンをひとまとまりで管理するための単位として理解するとイメージしやすいかもしれません。
実際に触ってみて、特に便利だと感じたのは次の点です。
複数の仮想マシンで構成されたシステムでは、個別に管理対象を追うよりも、まとまりとして見られる方が運用しやすい場面があります。インスタンス画面で関連仮想マシンの状態を一覧できるため、インスタンス内の仮想マシンの状態確認が効率的に行えます。
仮想マシンを1台ずつ操作する必要がなく、インスタンス単位でまとめて起動・停止が可能です。開発環境やテスト環境など、まとめて電源操作を行いたいケースで特に有用だと感じました。
インスタンス内の複数仮想マシンに対してスナップショットをまとめて取得できます。システム更新前に一括でスナップショットを取得し、問題が発生したら一括で戻す——という運用が実現できるため、メンテナンス作業の効率化につながります。
その意味でも、インスタンス単位で扱えることにはメリットがあると感じました。
一方で、注意したい点もあります。
インスタンスを削除する場合、配下の仮想マシン全体に影響があるため、操作時には十分な確認が必要です。
誤操作対策として、必要に応じて ロック (lock) 機能を活用するのも有効だと思います。ロックを掛けたインスタンスは削除操作が制限されるため、気づきにつながります。
仮想マシン個別の停止、起動、再起動操作も対象インスタンスの[リソース]タブから仮想マシンを個別に選んで操作することが可能でした。
今回確認した範囲では、スナップショットはインスタンス内の複数仮想マシンに対して取得できましたが、ネイティブバックアップ (native backup) については代表的な仮想マシン以外で制約があるように見えました。
マルチノード構成のインスタンスにおけるバックアップ動作の詳細は、今後のバージョンアップで改善される可能性もあるため、最新のリリースノートを定期的に確認することをお勧めします。
(参考:2026年4月時点の最新版はv8.1.2です)
バックアップに関してはVeeamなどの外部バックアップツールとの連携もサポートされています。ただし、インスタンスのリストアに関しては制限があるため注意が必要になります。この点に関しても、今後のアップデート動向が気になるところです。
■ Veeamに関する制限事項 Considerations and Limitations
https://helpcenter.veeam.com/docs/vbr/userguide/hpe_limitations.html?ver=13
"Veeam Plug-in for HPE Morpheus VM Essentials does not support restore of multiple VMs to the original horizontally scaled instance — if a VM is restored to such an instance, other VMs in this instance will be removed. However, restore to another instance can be performed instead using the Restore to a different location mode."
「Veeam Plug-in for HPE Morpheus VM Essentials は、水平方向にスケールされた元のインスタンスに対して複数の 仮想マシン を復元することをサポートしていません。もしこのようなインスタンスに 仮想マシン を復元すると、そのインスタンス内の他の 仮想マシン は削除されてしまいます。ただし、「別の場所へ復元(Restore to a different location)」モードを使用すれば、別のインスタンスへの復元は可能です。」
対応するISVは以下を参照ください。
Qualification Matrix for HVM Clusters Managed By HPE Morpheus Software
https://support.hpe.com/hpesc/public/docDisplay?docId=sd00006551en_us&page=GUID-EA7C0803-E66B-4B17-B994-30D4025A258F.html Table 3. Independent Software Vendor (ISV) Support
個人的には既存のインスタンスから仮想マシンを引っ張ってきてターゲットになるインスタンスに取り込むことや、逆に分離のようなこともできると、利便性がさらに向上するのではないかなと感じました。
2024年のBroadcomによるVMware買収以降、ライセンスコストの大幅な上昇に直面している企業が国内で多数存在すると言われています。「VMwareに代わるオンプレミス仮想化基盤」としてVM Essentialsの認知度は急速に高まっており、HPE公式サイトでは仮想化コストを最大90%削減できると紹介されています。
VM Essentials Managerは、HPE VMEクラスター (KVMベース) とVMware vCenterの両方を1つのコンソールから統合管理できるため、既存のVMware環境と新規のHVM環境を共存させながら段階的に移行を進めるアプローチが可能です。さらに、v8.0.9からはMigration Toolsが実装され、VMware vSphere上の仮想マシンをHVM環境にV2V移行する機能も提供されています。
本記事でご紹介した「インスタンス」の概念は、VMwareの仮想マシン管理とは異なる考え方のため、移行を検討される際にはこの違いを事前に把握しておくとスムーズに運用設計が進められるでしょう。
VM Essentialsのインスタンスは、単なる「仮想マシン 1台」と考えるよりも、関連仮想マシンをまとめて扱う管理単位として捉えると理解しやすいかもしれません。これから触る方にとって、用語のイメージを整理する参考になれば幸いです。
【要点まとめ】
横河レンタ・リース株式会社は「実機検証で知りえた知見を皆さまへ」をキャッチフレーズに、今後もVM Essentialsをはじめとする仮想化基盤の技術情報を発信してまいります。VM Essentialsの導入検討やVMwareからの移行にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
ブログを読んでいただきありがとうございました。
次回は High Availability (High Availability, HA) の設定や小技についてまとめる予定です。
よろしくお願いします。
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項目 |
内容 |
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名前 |
永野 裕介 (ながの ゆうすけ) |
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職種 |
製品の技術検証 |
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得意分野 |
ストレージ製品、仮想化製品 |
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趣味 |
ゲーム、動画視聴 |
デスクトップ製品のコールセンターからインフラエンジニアまで幅広く業務を経験、IT業界には21年以上携わってきたエンジニア。
本ブログでは、可能な限り実機検証に基づいた情報をお届けします。
横河レンタ・リース株式会社は、最新のテクノロジーと当社独自の技術を融合させ、要件定義から構築、運用支援までお客さまのビジネスに最適な環境を、確かな品質で提供します。ランサムウエア対策を見据えた信頼性の高いバックアップ体制をお求めの際は、豊富なノウハウを持つ当社へぜひご相談ください。