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オブジェクトストレージとは?バックアップ・アーカイブで使う際の判断軸

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NAS の空き容量が減り続け、古い案件データを消すにも消せず、バックアップの保存先も膨らんでいく。こうした状況で「オブジェクトストレージ」という選択肢を目にした方は少なくないと思います。大容量で容量単価が安いと紹介されることが多く、保存先の悩みを一度に解決してくれるように見えるかもしれません。

ただ、実際に検討を始めると「バックアップ先として使えるのか」「アーカイブとは何が違うのか」「本当に安くなるのか」といった疑問が次々と出てきます。保存方式としての特性を理解しないまま検討を進めると、置くことはできても、いざというときに復旧できない、あるいは取り出し費用がかさむといった事態になりかねません。

本記事では、オブジェクトストレージの仕組みとファイル・ブロックとの違いを整理したうえで、バックアップとアーカイブという目的の異なる用途にどう当てはめるかを、判断軸と注意点を交えて解説します。

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目次

 データが増え続ける現場で、保存基盤の見直しが必要になる場面 

まず押さえたいのは、オブジェクトストレージが候補に挙がる背景です。

多くの現場では、ファイルサーバーや NAS の容量が慢性的に逼迫しています。過去案件のデータは「いつか使うかもしれない」という理由で消せず、バックアップの世代を増やせばその分だけ保存先も膨らみます。担当者としては、日常的に使う業務データと、めったにアクセスしない保管データが同じ場所に同居していること自体が、そもそもの負荷になっている状態です。 

 困っているのは「一次データ」か「二次データ」か 

検討の入り口として重要なのは、困っているのが「頻繁にアクセスする一次データの性能や容量」なのか、それとも「めったに触らない二次データの保管先」なのかを分けて考えることです。オブジェクトストレージは後者、つまり保管・退避を目的とした大容量データと相性がよい保存方式と考えられます。

注意したいのは、容量単価の安さだけを理由に検討を始めると、後述する取り出し費用や運用負荷を見落としやすくなる点です。まずは自社のデータを性質ごとに切り分けるところから始めるのが現実的でしょう。

オブジェクトストレージとは - 仕組みと、ファイル・ブロックとの違い

オブジェクトストレージとは、データを「オブジェクト」という単位で扱い、データ本体とメタデータ、識別子をひとまとめにして、階層のないフラットな空間に格納する保存方式です。フォルダをたどるのではなく、API を通じて識別子でアクセスするのが基本的な使い方です。

3種類のストレージの違いを整理する

イメージをつかむために、代表的な3つの保存方式を整理します。用途に応じて向く形式が異なる点がポイントです。

保存方式

アクセス方法

得意な領域

主な用途例

ファイルストレージ (NAS など)

フォルダ階層をたどる

共有・日常的な読み書き

部門の共有ファイル、業務データ

ブロックストレージ

OS がボリュームとして認識

低遅延・高頻度アクセス

データベース、仮想マシンの領域

オブジェクトストレージ

API で識別子アクセス

大容量・保管・分散

バックアップ、アーカイブ、ログ保管

「万能ストレージ」ではないという前提

オブジェクトストレージは「なんでも置ける万能ストレージ」ではありません。頻繁な上書きや低遅延を求める用途、たとえばデータベースの実データや業務アプリの作業領域には向かない場合があります。あくまで「どんな性質のデータを置く形式か」という観点で捉えることが、後の用途判断につながります。

なぜ「バックアップ・アーカイブでの用途判断」が難しいのか

ここが本記事の核心です。オブジェクトストレージの検討でつまずきやすいのは、バックアップとアーカイブを同じものとして考えてしまう点にあります。

バックアップとアーカイブは目的が違う

現場では、この2つが混同されがちです。どちらも「データを別の場所に保存する」という点では似ていますが、目的が異なります。バックアップは、障害や誤削除、ランサムウェア被害などから「元の状態に戻す」ための仕組みで、復旧の速さと確実さが問われます。一方アーカイブは、使わなくなったデータを「長期に保管する」ための仕組みで、保存期間や改ざんされにくさが問われます。

「保存できる」と「復旧できる」は別問題

この違いを意識しないまま「オブジェクトストレージに置けば安心」と考えると、判断を誤ることがあります。置くこと自体はできても、バックアップとして求める時間内に復旧できるとは限らないためです。取り出しに時間や費用がかかる保存階層を選んでしまうと、いざというときに業務再開が遅れる可能性があります。

そのデータに求めるのは「決められた時間内での復旧 (RPO/RTO)」か、それとも「長期の保管と改ざん耐性」か。目的を先に決めてから、保存先の特性が合うかを確認する順序が安全です。目的そのものの違いは別記事で整理しているため、あわせて確認すると理解が進みます。

バックアップ・アーカイブ用途での位置付けと判断軸

目的の違いを踏まえると、オブジェクトストレージがどの用途に向くかが見えてきます。用途ごとに向き不向きを整理します。

バックアップ用途での向き不向き

向いていると考えられるケースは次のとおりです。

  • 3-2-1 の考え方に沿って、遠隔地の保存先や複製先の一つとして使いたい場合

  • 世代を多く保持したいが、復旧までにある程度の時間を許容できる場合

  • 改ざんされにくい状態 (イミュータブル) でバックアップを保持したい場合

一方、向いていないと考えられるのは次のようなケースです。

  • 数分単位の短い復旧時間を求められる基幹システムの唯一の保存先とする場合

  • 高頻度で復旧テストや部分リストアを繰り返す運用が前提の場合

アーカイブ用途での向き不向き

アーカイブ用途では、アクセス頻度が低く長期に保管する必要がある過去データやログ、保存期間が定められ削除・改ざんの防止が求められるデータと相性がよいと考えられます。判断軸は、アクセス頻度、保存期間、許容できる復旧時間、改ざん耐性の要否です。

注意したいのは、オブジェクトストレージを使うこと自体が、バックアップ対策の完了を意味するわけではない点です。世代管理や保存先の分散といった考え方と組み合わせる前提で捉えることが望ましいでしょう。単体で「これで安心」と結論づけるのは避けたほうが安全です。

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他の保存先との比較 - 費用と運用負荷をどう見るか

オブジェクトストレージを検討する際、多くの担当者が気にするのが「オンプレの NAS と比べて安いのか」という点です。ここでも、容量単価だけで判断すると実態を見誤ることがあります。比較の観点を整理します。

観点

オンプレ NAS・ファイルサーバー

オブジェクトストレージ

初期費用

機器購入が必要

抑えやすい傾向

容量単価

増設のたびに追加投資

従量制で安価な傾向

取り出し費用

基本的に発生しない

取り出し量や頻度に応じて発生する場合がある

復旧速度

ローカルは速い傾向

保存階層により差が出る

運用負荷

保守・更改・故障対応が必要

機器保守は不要だが設計・管理は必要

容量単価ではなく総コストで見る

容量単価が安く見えても、頻繁に取り出す用途では取り出し費用や通信費が積み上がり、総コストでは想定より高くなる場合があります。逆に、めったにアクセスしない保管データであれば、総コストで有利になることも考えられます。つまり費用は「単価」ではなく「使い方を含めた総額」で見る必要があります。自社の利用パターンを想定した試算が望ましいでしょう。

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導入・運用で見落としやすい注意点

最後に、導入した後に問題化しやすい点を公平に扱います。ここは「入れるかどうか」だけでなく「入れた後に運用が回るか」という視点が欠かせません。

アクセス設計・権限・鍵管理を後回しにしない

現場でよくあるのは、保存先を用意したものの、アクセス制御や鍵管理の設計が後回しになり、誰が管理するのか曖昧なまま運用が始まってしまうケースです。バックアップソフトとの連携可否を事前に確認していなかったために、想定した運用が組めないこともあります。アクセス制御、暗号化・鍵管理、監査ログの設計、既存ツールとの連携可否は、導入前に確認しておきたい項目です。

ツールだけでは運用は回らない

ツールを導入するだけでは運用は回りません。設計と体制が伴わなければ、「置いただけ」で活用されない状態になりかねません。担当者が不在でも運用が継続できるか、属人化していないかも確認しておきたい点です。導入しない場合のリスクだけでなく、導入しても運用できない場合のリスクも、あわせて検討することが必要です。

実務での進め方 - 用途整理から検証・運用まで

検討を具体的に進める場合、いきなり全面的に切り替えるのではなく、段階を踏む進め方が現実的です。

  1. データの棚卸し:どのデータが、どのくらいの頻度でアクセスされ、どれだけ保管が必要かを把握する

  2. 用途の分類:バックアップ用途か、アーカイブ用途か、一次データかを切り分ける

  3. 要件の定義:保存期間、許容できる復旧時間、費用の上限、改ざん耐性の要否を先に決める

  4. 小さく検証:対象データを絞って検証し、取り出し速度や費用、運用手順を確かめる

  5. 運用設計:アクセス権限、監視、担当と手順を決めてから対象を広げる

要件を決めないまま製品比較を始めると、機能や価格の情報に振り回され、判断が空回りしやすくなります。まず自社の要件を言語化し、そのうえで小さく検証してから広げるのが望ましいでしょう。

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よくある4つの疑問

Q1. オブジェクトストレージはバックアップ先として使えますか。

用途によっては有効な場合があります。遠隔地の複製先や世代保持の保存先としては相性がよい一方、数分単位の短い復旧を求められる基幹システムの唯一の保存先には向かないことがあります。求める復旧時間 (RTO) を満たせるかを事前に確認することが必要です。

Q2. NAS やファイルサーバーは不要になりますか。

一概には言えません。日常的に読み書きする業務データはファイルストレージが向く場合が多く、保管・退避目的の大容量データはオブジェクトストレージが向くと考えられます。多くの環境では、両者を用途で使い分ける形が現実的です。

Q3. 容量単価が安いと聞きますが、総コストも安くなりますか。

環境によって異なります。容量単価が安くても、取り出し費用や通信費が加わるため、頻繁にアクセスする用途では総コストが高くなる場合があります。自社の利用パターンを想定した試算が望ましいでしょう。

Q4. アーカイブ用途で使う際に確認すべきことは何ですか。

保存期間の要件、改ざん・削除の防止の要否、取り出しにかかる時間と費用が主な確認点です。長期保管が前提であれば、運用中の管理体制や監査への対応も事前に整理しておくと安全です。

まとめ

オブジェクトストレージは、大容量データの保管に向く保存方式ですが、検討の要点は「置けるかどうか」ではなく「目的に合うかどうか」にあります。この記事の要点を整理すると、次のとおりです。

  • 仕組みとしては、ファイル・ブロックとは異なり、API 経由で識別子アクセスする大容量向けの方式

  • バックアップ (復旧目的) とアーカイブ (保管目的) は目的が異なり、用途に応じて向き不向きがある

  • 費用は容量単価ではなく、取り出しや運用を含めた総額で見る必要がある

  • 導入だけでなく、アクセス設計・運用体制まで整えて初めて活用できる

自社のデータを性質ごとに切り分け、要件を固めたうえで小さく検証する。この順序で進めることが、判断を誤らないための現実的な進め方と考えられます。

自社環境でバックアップ・アーカイブの用途をどう切り分けるか、どの保存先が妥当かの判断が難しい場合は、比較表や選定チェックリストなどの資料をもとに、構成や要件を整理する選択肢もあります。

横河レンタ・リース株式会社は日本ヒューレット・パッカード社の Platinum パートナーとして、IT 機器のレンタル・販売に加え、ストレージやバックアップの構成設計から運用保守までを組み合わせて提供しています。保存先の選定や用途の切り分けを自社だけで判断するのが難しい場合は、資料のご確認や構成のご相談から始める選択肢もあります。 

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